代表的なアプローチ

当センターで使われる心理的アプローチやトレーニングの代表的な手法について、以下に解説しています。各センター、ルームにより、所属するカウンセラーの専門領域や得意とする技法が異なるため、提供できるアプローチやセラピーの内容は多少異なります。ご利用可能なルーム、カウンセラーの中から、その方の課題に合った最適のアプローチをご提案しております。ここに挙げた以外にも、さまざまな専門的アプローチやプログラムがあります。

 

カウンセリング

カウンセリングは、ロジャーズによって確立された来談者中心療法が、現在も広く用いられ、その有効性が実証された方法です。共感的な傾聴をベースに、クライエントの気持ちにより添いながら、クライエントの思考の流れや主体性を大切にする方法です。当センターも、共感的なカウンセリングをもっとも基本的な方法として、重要視しています。

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認知行動療法

うつや落ち込み、不安やパニック発作、対人関係や行動上の問題などの根底には、自分が意識しないうちに、きっかけとなる出来事に対して自動的にネガティブな価値判断をしたり、過剰で偏った受け止め方をしていることが、悪循環を形成しています。こうした自動的な反応パターンに気づき、それを修正していくことで、うつや不安症状、パニック障害、対人関係や行動上の支障を改善し、適応しやすくする治療法です。社交不安障害やパーソナリティ障害、強迫性障害、依存や嗜癖などの問題にも有効です。

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心理教育

自分の状態や病気について、原因や特性、対処法などを学ぶことによって、理解を深めるとともに、無用な不安や回避による悪循環を防ぎ、適切な対処ができるのを助けます。さまざまな問題について心理教育はとても有効な方法です。軽度な場合や回復意欲が高い場合には、心理教育だけで大幅に改善することも珍しくありません。当センターでは、さまざまな専門プログラムに心理教育を取り入れています。

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解決志向アプローチ

原因を調べることよりも問題を解決することを優先するカウンセリングの方法で、問題にある程度向き合い、克服しようという意思がある場合にはとても有効な方法です。その人が”どうなりたいのか”という点を重視し、主体的な問題解決を応援します。当センターでも重視しているアプローチの一つです。

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動機付け面接法

人が悩みにとらわれ、動けなくなってしまうのは、両価的な葛藤(反対の気持ちの間で板挟みになること)に陥るためです。動機付け面接法は両価的葛藤を明確化し、それを克服していくことで自分を変えようという気持ちや行動を強化する面接技法です。依存症の改善のために開発された技法ですが、さまざまな場面で取り入れることができます。

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愛着アプローチ

愛着とは、対人関係の土台をなすもので、母親と生後半年~一歳半頃の時期に基礎が育まれ、その人の安心感や対人信頼感の土台ともなる仕組みです。オキシトシンというホルモンによって司られ、オキシトシンには人との関係を円滑にしたり愛情を維持する作用やストレスや不安を和らげる作用があります。愛着が不安定でオキシトシン系の働きが悪いと、うつや不安、傷つきやすさ、潔癖さの原因となり、慢性のうつや気分障害、依存症、摂食障害、適応障害などを引き起こしやすくなり、また発達の課題がある人では症状や問題行動が強まったり、適応力の低下を招いたりします。愛着アプローチは愛着の安定化をはかり、オキシトシン系の働きを強化することで上記のような状態の改善をはかるものです。児童・青年では、親と一緒に取り組んでもらい、結婚されている成人の場合には御夫婦で取り組まれることが効果的です。愛着アプローチでは、症状自体を改善しようと取り組むのではなく、その人と重要な他者との関係を改善することにより結果的に症状も良くなることをめざします。ほかの方法ではなかなか改善しないケースにも効果が期待でき今注目されています。親子関係の問題や慢性的な自己否定感に苦しんでいるケースでも有用です。

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愛着改善プログラム

愛着アプローチでは、安全基地となってくれる人の存在が必要です。しかし現実には家族や身近な人が安全基地となってくれることが難しく、協力を期待しづらいケースもあります。また、ある程度自分の抱えている問題に自覚が生まれ自分でもなんとか乗り越えたいという場合もあります。しかし、通常のカウンセリングや認知行動療法などを受けてこられたけれども不安定な愛着の問題や愛着トラウマがなかなか改善しないというケースも少なくありません。もっと有効な手立てはないのか。そうしたニーズに応えるべくこれまで積み重ねられてきたさまざまな経験や手法を集大成して作られたのが、愛着の課題に焦点化した不安定型愛着改善プログラムです。その方の愛着スタイルに応じて、両価型愛着改善プログラムと回避型・回避性パーソナリティ改善プログラム、恐れ・回避型愛着改善プログラムの3つが用意されています。いずれも各段階の課題をクリアして、次に進んでいくようになっておりカウンセリングであると同時にトレーニングとして取り組めるようになっています。

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修復的愛着療法

親子間の傷ついた愛着を修復するアプローチです。ホールディングやインナーチャイルドの技法をもちいて、抵抗なく愛されたい、愛したいという気持ちを喚起し、スキンシップや封じ込めてきた思いを語ることを通して、絆の修復をサポートします。

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社交不安障害改善プログラム

人前で話すのが苦手で、避けてしまうといった社交不安障害は、とても頻度の高いものです。せっかくのチャンスを避けてしまうことで能力を発揮することができないというケースも多いと言えます。このプログラムは社交不安障害の改善に有効なさまざまな方法を組合せ、トータルな訓練が行えるようにしたものです。認知行動療法やエクスポージャー、森田療法、ACTの手法も取り入れ、さらにトレーニングと組み合わせることで実践的な改善を目指します。

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マインドフルネス

慢性的なうつや空虚感、自己否定や自信欠乏で苦しんでいる人に今とてもお勧めで効果的なのがマインドフルネス療法です。マインドフルネスは、どんなものごとも価値判断せずにありのままに受け止め、感じる心のありようのことです。うつや空虚感に囚われやすい人は、とかく今の状態を理想の状態と比べてしまい、ダメだとか嫌だかとすぐに価値判断してしまう癖があるものです。それは理想の状態や目標達成に向けて努力することが、価値のあることだという生き方を知らずしらず行ってきた結果でもあります。そういう自分だけを認めてもらえたということも関係していると思います。でもそうした心のもち方は、物事がうまくいかないときには自分を苦しめてしまいます。マインドフルネスでは、ありのままの自分をありのままに感じることの素晴らしさに気づくという新しい視点を体験することで価値判断にとらわれない豊かな生き方を頭だけでなく心や体の体験を通して身に着けていきます。

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トラウマケア

人はさまざまな心の傷をかかえています。命にかかわるような体験をしたり、ショッキングな出来事から心的外傷を生じ、それが長期にわたってその人を苦しめるPTSDだけでなく、最近より多く人にみられるのは小さな傷つきが積み重なってそれがある限界を超え過敏さやネガティブな気分・思考が慢性的に続いたり、傷つくことを避けようとして社会生活や対人関係が消極的になり適応力が低下してしまっている状態です。また、親子関係や夫婦間で傷つけられた体験がその人の足を引っ張っていることも多いと言えます。これまでそうした心的外傷を改善する手段は限られ長い時間を要するのが普通でしたが、近年いくつかの有力なアプローチが開発され、比較的短期間に改善が得られるケースも増えてきています。以下に、当センターで受けることのできる代表的なアプローチを紹介します。

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TIC(トラウマ・インフォームド・ケア)

トラウマが長期化したり、複雑化したりすることを防ぐための方法として、また、PTSDで苦しんでいる方の第一段階のケアとして、近年注目されているアプローチです。その人が受けたことが、外傷的な体験(トラウマ)であることを自覚し、トラウマが引き起こす作用やその特性、対処の仕方を学ぶことで、正体不明の不安や恐怖、心身の不調に苦しめられることが減っていきます。トラウマを扱うカウンセリングや専門的なプログラムにも、取り入れられています。

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EMDR

トラウマ処理の方法として、現在もっとも広く使われているアプローチです。眼球運動によって海馬へのアプローチを活性化することで、記憶の底に沈んでいたトラウマ記憶を再現させ、想起した場面を語り、それに共感とともに、新たな解釈を与えることで、トラウマ記憶の無毒化を行います。こうしたプロセスを積み重ねることで、トラウマの処理が進んでいきます。EMDRの資格を持った心理士が行います。当センターでは、スーパーバイザーとともに顧問の医師が状態や経過をモニターして、安全に行えるように配慮しています。

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ナラティブ・エクスポージャー・セラピー

自分が体験したことをナラティブ(語り)として表現し、語りの中で再体験し、感情を放出するとともに、新たな意味づけのもと、再統合する作業を、カウンセラーとともに行うことで、トラウマを克服する方法です。ヴェトナム戦争で過酷な体験をし、PTSDとなった多くの兵士たちにも活用され、比較的安全性が高く、かつ高い有効性が認められた方法です。カウンセリングや他の技法と組み合わせて用いられることもあります。

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EFT(タッピング療法)

トラウマは身体的な反応と結びつくことで、言語的なアプローチだけではコントロールが難しい場合があります。そうした場合に有効性が期待できる方法の一つが、EFT(タッピング療法)です。東洋医学の「気」の理論が取り入れられ、タッピングの技法を用いることにより、トラウマと結びついたネガティブな感情やとらわれを解放し、自律神経の不均衡を改善するものです。安全性が高いアプローチです。専門的なトレーニングを受けたセラピストが行います。

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ホログラフィートーク

ホログラフィートークは、嶺輝子氏によって開発されたトラウマ処理のアプローチで、軽催眠下で、クライエントをとらえている感情や身体症状がどこに由来するかを、クライエント自らが気づいていくことによって、トラウマの解消を図ります。正式の研修を受けた資格を持つ心理士が、担当します。イメージすることが苦手だったり、極度に不安定な状態の場合には、適しませんが、安全性の高い方法です。

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ソマティック・エクスペリエンシング

アメリカのピーター・A・ラヴィーン博士によって開発された、トラウマ処理の方法です。トラウマを抱えた人では、過覚醒状態や交感神経の過度な緊張状態が続いていますが、ソマティック・エクスペリエンシングでは、身体感覚に注意を向け、そこからの気づきを通して、高度に覚醒した神経の過剰にたまったエネルギーを徐々に中和し解放することで、症状の改善を図ります。トラウマと結びついた心身の異常を改善する方法として、アメリカを中心に広まっています。専門の研修を受けた、資格を持つ心理士が担当します。

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SSP(Safe & Sound Protocol)

SSPとは、近年注目される、ポリヴェーガル理論に基づいた新しいトレーニング法です。アメリカのステファン・ポージェス博士によって開発されました。ASDやHSPがあり感覚が過敏な方や、トラウマを抱えた方では、感覚過敏だけでなく、それと結びついた迷走神経の異常な反応が起きています。SSPでは、特殊な加工を施した音楽を聴くことで、聴覚をはじめとする過敏性や傷つきやすさや迷走神経の異常な反応を和らげます。過敏さや過度の緊張、不安、それに伴う生きづらさを改善するとともに、社会的な関わりやコミュニケーションを促進し、ストレスに対する抵抗力や安心感、幸福感を高める方法として注目されています。専門の研修を受けた、資格を持つ心理士が担当します。

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ハコミセラピー

イメージを活用することで、トラウマとなった状況を再現し克服していくことを助ける強力なセラピーの手法です。長年未解決だった問題やトラウマ、とらわれをほぐしていきます。専門的な訓練を積んだセラピストしか行うことができません。

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メンタライゼーション・ベースト・トリートメント(MBT)

相手の気持ちを相手の立場に立って理解することを、メンタライゼーションと言います。境界性パーソナリティ障害など、自己否定や怒り、被害的考えにとらわれやすい状態では、このメンタライゼーションが低下して相手の気持ちを正しく読み取れなくなっていると考えています。メンタライゼーションを修正し、相手の気持ちを相手の立場に立って理解できるようになることでネガティブな感情や行動に陥ることを減らし生きやすくなるのです。ただ、MBTは精神分析をベースにした方法で長い時間と費用がかかってしまいます。当センターの顧問岡田は、もっと使いやすい形にMBTを取り入れたメンタライゼーション・トレーニングを開発し、不安定型愛着改善プログラムなど、さまざまなプログラムに活用しています。取り組みやすく、比較的短期間でトレーニングすることができます。

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トレーニングとコーチング

人前でうまく話せないとか、コミュニケーションがうまくとれない、対人関係でうまく立ち回れない、話が聞き取れないなど、さまざまな実践的な課題では、カウンセリングだけでは十分なサポートになりません。実際に練習をしたり、ロールプレイをしたり、実践的な訓練を積むことも必要です。当センターでは、ロールプレイやスピーチ・トレーニングを中心とするソーシャル・スキル・トレーニング、ワーキングメモリーや作業課題による認知的トレーニング、現状分析やプランニングを強化し、戦略的に行動できる力を高める訓練などを、その人の課題に応じて組合せ、行っています。カウンセラーに後押ししてもらい、一緒に取り組むことで、楽しみながら実践的スキルを高めていきます。トレーニングにおいては、カウンセリングも行いますが、課題を突破するために勇気や意欲を高め、危険や失敗を防ぎつつ、行動の後押しをするために、コーチングの手法を併用することが多いと言えます。

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発達支援プログラム(発達トレーニング)

発達障害の方では、眼球運動や凝視がスムーズに行えなかったり、左右のバランスや目と手の協働動作がうまくできなかったり、聞き取りが苦手だったり、筋緊張が亢進していたりといった神経学的な特徴がみられます。さらに、イメージを取り扱う能力やワーキングメモリー、心の理論、部分を全体に統合する能力といったものにも課題がみられることがしばしばです。各人の特性分析を踏まえて、オーダーメイドでプログラムを用意し、必要なトレーニングを行います。従来から行われている感覚統合療法に加えて、最新の研究成果を踏まえ神経の発達や統合を促すさまざまなトレーニングを組み合わせて行います。楽しみながら、遊びながらスキルや共感性を高めていくことをめざします。

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発達や愛着に課題をもつ人のためのスキルトーニング

発達や愛着に課題をもち、対人関係や生活面、職業面において、様々な支障に悩まされる青年および成人のためのプログラムです。生きづらさを和らげ、うまく人生をやりこなせることをサポートするために、有用性が高い方法やノウハウを結集して、顧問の岡田尊司博士が開発したものです。対人関係スキル、高度な実践スキル、認知的処理スキルの三つのスキルにわかれ、各スキルのトレーニングより構成さています。

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ニューロフィードバック・トレーニング

脳波をモニターしながら、集中力の高まった脳の状態やリラックスした状態を自分で維持できるように訓練するトレーニングです。集中とリラックスの切り替えをの集中力が高まったときに出現するガンマ波やリラックスしているときに現れるアルファ波を検知すると、コンピューターが画像や音により本人に知らせることで、自己制御する力を身につけていきます。不注意や衝動性などが目立つADHDや過緊張で、視野が狭くなり安いASD(自閉スペクトラム症)だけでなく、さまざまな症状、学習やスペーツ分野で有効性が示されています。ADHDについては、薬物療法と同等の効果があるとされ、薬物療法では認められなかった学業成績の改善が、ニューロフィードバック・トレーニングでは報告されています。

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学習障害支援プログラム

がんばっているのに、勉強が身につかない、成績が伸び悩む、ミスや聞き漏らしが多い、計算はできるが文章題が苦手、漢字の書き取りが苦手といったことでお悩みの方は、少なくないと思いますが、そうした背景には、しばしば軽度の学習や注意の問題がひそんでいます。ただ、無理やり勉強させようとしても、本人の力ではどうにもならず、勉強嫌いが強まってしまうだけです。こうしたお子さんが躓きやすい問題には、その特性に即した指導や学習法が必要です。学習障害や注意障害の指導のノウハウを採り入れた支援プログラムを、各人の課題ごとに用意し、それに取り組むことで、「わかった!」「できた!」という体験を得られやすくなります。学習支援を通して自信を回復することで、情緒や行動面での改善も期待できます。

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